知らずに傷つけていませんか うつ病の人に避けるべき言動と寄り添い方

メンタル
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うつ病の方と接するとき、良かれと思ってかけた一言が、実は相手を深く傷つけてしまうことがあります。たとえば励ましの言葉やアドバイス、心配からの問いかけが、本人にとってはプレッシャーになってしまうこともあるのです。

この記事では、うつ病の方に対して避けたほうがよい言動を丁寧に解説しながら、どのように接すれば安心感を届けられるのかをお伝えしていきます。うつ病の人を支えるご家族、友人、職場の同僚や上司など、身近に接する立場の方にこそ読んでいただきたい内容です。

正しすぎる言葉が追い詰めてしまうことがある

「規則正しい生活をしたほうがいい」「朝はきちんと起きるべき」「外に出て散歩すれば気分が晴れる」といった言葉は、間違っているわけではありません。むしろ、心と体の健康には大切なことです。けれども、それが「できない」状態にあるのが、うつ病のつらさでもあります。

本人も、「朝起きたほうがいいこと」や「食事をきちんととったほうがいいこと」は、よく理解しています。でも、それができないからこそ苦しいのです。そこに正論を投げかけられると、「できない自分はダメだ」と、ますます自分を責めてしまうことにつながります。

意図せずして正しさが鋭い刃のように感じられ、追い詰められたような心境になってしまう方もいます。その結果、症状が悪化してしまうこともあるのです。大切なのは、「正しいこと」を伝えるよりも、「その人の今の状態に寄り添うこと」です。

急がせる言葉が混乱や絶望を招くことがある

「薬は飲むの?」「休職する?復職する?早く決めたほうがいいよ」といった決断を急がせるような言葉も、注意が必要です。うつ病のときは、思考力や判断力が大きく低下していることがあります。そのため、今すぐに答えを出すのはとても難しい状態にあるのです。

周囲としては心配だからこそ、「早く決めて安心したい」と思うかもしれません。でも、急かされることで、頭の中がさらに混乱してしまったり、自分を追い詰めてしまったりすることがあります。

また、不安や絶望感が強まっているときには、衝動的に極端な行動に出てしまうこともあるのです。突然仕事を辞めたり、大切な人との関係を断ってしまったり、自分の存在を否定してしまうような決断をしてしまうことさえ、珍しくありません。

何かを決めるには、その人自身が少しでも気持ちを整えられる時間が必要です。急がせるのではなく、待つことも大切な支え方の一つです。

つらさを軽く扱うと、かえって深く傷つくことがある

「そんなの誰にでもあることだよ」「みんなだってしんどいんだよ」といった言葉も、よく耳にするかもしれません。でもこれは、相手のつらさを軽視しているように受け取られることがあります。

周囲としては、「大丈夫だよ」という気持ちを伝えたくて言っているのかもしれません。しかし、言われた本人は、「他の人は乗り越えているのに、自分は乗り越えられないんだ」と、自分の弱さや無価値さを深く感じてしまうことがあります。

「みんなができることなのに、自分だけできない」という思いが強まると、自己否定が深まり、生きることさえ苦しくなってしまうこともあります。

その人にとっては、その苦しみはたった一つしかない「自分だけのもの」です。その痛みを、まずは「そう感じることもあるよね」と認めることが、何よりの助けになるのです。

質問のしすぎは負担になることがある

「どうしてそんなにつらいの?」「何が原因だと思う?」と、状況を理解しようとすること自体は悪いことではありません。けれども、質問が多すぎたり、答えを求めるテンポが早すぎたりすると、相手にとっては「責められている」と感じることがあります。

質問に答えるという行為には、エネルギーが必要です。うつ状態のときは、そのエネルギーがとても不足しているため、考えることや言葉を選ぶこと自体がつらく感じられるのです。

質問に答えられない自分を「ダメだ」と思ってしまったり、「どうしてこんなふうになったんだろう」と自分を責めるきっかけになったりすることもあります。

さらには、「うまく説明できない」ことに不安や恐怖を感じ、関係そのものに距離を置きたくなってしまうこともあります。

「答えなくていいよ」と前置きしたり、「聞いてもいいかな」と尋ねるだけでも、相手の心の負担はぐっと軽くなります。

励ましの言葉が逆効果になるときがある

「頑張れ」「しっかりして」といった励ましの言葉も、時と場合によっては逆効果になることがあります。特に、うつの症状が強く出ている時期や、再発直後の段階では、「何もできない自分がさらに頑張らなきゃいけないのか」と感じてしまい、心が折れてしまうことがあります。

「頑張れ」と言われることで、自分の無力さをより強く意識してしまい、苦しみが深くなってしまうのです。

一方で、少し回復の兆しが見えてきて、ほんの少し動けるようになってきたタイミングでは、やさしい言葉が励ましになることもあります。ただし、その場合でも「頑張れ」ではなく、「頑張ってるね」「無理しすぎないでね」といった言い回しのほうが、心に寄り添った響きになります。

大切なのは、今その人がどのタイミングにいるかを見極め、そのときにふさわしい言葉を選ぶことです。

うつ病の人と接するときに大切にしたい5つのこと

うつ病の方と接する上で心がけたいのは、相手のペースを尊重し、できるだけ安心できる関わり方をすることです。

まず一つ目は、相手のペースに合わせることです。自分のテンポで話したり、早口になったりせず、少しゆっくりとしたリズムで接するだけでも、安心感を届けることができます。

二つ目は、励ましよりも労いを意識することです。「頑張れ」ではなく「よく頑張ってるね」といった言葉は、相手の努力を認め、肯定する力を持っています。

三つ目は、その人の体験をそのまま受け止めることです。「みんなそうだよ」ではなく、「あなたがつらいと思うなら、それは本当につらいんだよ」と伝えることが、何よりも癒しになります。

四つ目は、「できないこともある」と認めることです。「そんな時もあるよね」「今はそういう時期だよね」と声をかけるだけで、心の重荷が少し軽くなります。

五つ目は、質問をする前に一言聞いてみることです。「少しだけ聞いてもいいかな?」と断りを入れることで、相手に選ぶ自由を渡し、安心感を保つことができます。

まとめ

うつ病の方にとって、周囲の言葉や態度は時に強い影響を与えます。それが安心感となることもあれば、無意識のうちに心を傷つけてしまうこともあります。

大切なのは、正しさよりも寄り添う気持ちです。励ましや助言の前に、その人のつらさにそっと耳を傾ける。そして、「できなくてもいいよ」「今は休んでいいよ」と、静かにそばにいること。

誰かの心の支えになれるのは、特別な知識やスキルではなく、ほんの少しの思いやりと理解です。この記事が、あなたと大切な人との関係をあたたかくつなぐ手助けになれば幸いです。

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