私たちは毎日、当たり前のように食事をしています。食べることは身体をつくるだけでなく、心にも影響を与える大切な行動です。けれども、忙しさや疲れから、つい簡単なもので済ませたり、偏ったものばかり食べてしまうこともありますよね。
実は、そうした食生活の積み重ねが、気づかないうちに心のバランスを崩してしまうことがあるのです。気持ちが落ち込んだり、やる気が出なくなったりするのは、性格や環境だけが原因ではありません。食べ方の癖が心に影響を与えている可能性もあります。
この記事では、心の健康を守るために、見直しておきたい5つの食習慣について丁寧にお話ししていきます。日々の生活の中で、少し意識を変えるだけで心の安定につながることもありますので、ご自身の食生活を振り返るきっかけにしていただけたら嬉しいです。
カロリーの摂りすぎが脳に与える影響
心の不調と体の状態は密接につながっています。なかでも体重が大きく増えてしまうような食生活は、脳の働きにも影響を及ぼすことがあるとわかってきました。
体重が増えすぎると、脳の一部の機能が低下したり、思考の柔軟性が損なわれたりする傾向があります。こうした変化は、感情のコントロールにも関係しており、気持ちが不安定になりやすくなります。
適正な体重を保つためには、主食の量を見直し、おかずや野菜を中心にする工夫が役立ちます。ご飯やパンなどの糖質は、必要以上に摂ると脂肪として蓄積されやすくなりますので、控えめを意識してみましょう。また、甘い飲み物をお茶に変えるなど、飲み物の選び方も大切です。
極端な食事制限をするのではなく、満腹感を得ながらも栄養バランスを整えることを意識するだけで、少しずつ体と心に良い変化が現れてくるでしょう。
甘いものが心に与える両面性
疲れているときに甘いものを食べると、ほっとした気持ちになりますよね。実際、甘いものは脳の中で癒しに関係する物質を増やすため、気持ちを落ち着かせる効果があります。
けれども、その効果は一時的です。習慣的に甘いものに頼るようになると、エネルギーの過剰摂取や体重増加につながるだけでなく、血糖の乱高下によって情緒が不安定になりやすくなります。
特に、食後や仕事の合間などに甘いものを無意識に摂る習慣があると、気づかぬうちに依存のような状態になることもあります。これが続くと、身体の不調だけでなく、気分の落ち込みやイライラが増えてくることもあります。
甘いものは完全にやめる必要はありませんが、量や頻度を見直すことが大切です。家や職場に常にお菓子があるという状態は避けて、必要なときだけ少量を楽しむようにするのがよいでしょう。自分の気持ちに向き合いながら、甘いものとの付き合い方を工夫することが心の安定につながります。
アルコールの取りすぎがもたらすリスク
お酒もまた、気持ちをゆるめてくれる存在として身近です。仕事終わりの一杯でリラックスすることは、ストレス解消の一つの手段かもしれません。
ですが、アルコールが体内で分解されるときに生まれる物質が、脳の働きに悪い影響を与えることがあるのです。さらに、アルコールは高カロリーな飲み物でもあり、体重の増加にもつながります。
飲酒が習慣化している人は、知らず知らずのうちにその量が増えていき、心のバランスにも影響が出てくることがあります。気分が沈んだときや眠れないときにお酒を飲むことが習慣になっている場合は、特に注意が必要です。
飲まないに越したことはありませんが、もし飲む場合は自分にとって無理のない範囲で量を調整しましょう。例えば、1回の飲酒量を決めて、それ以上は飲まないようにすることで、心と体の負担を減らすことができます。
野菜不足が腸と脳に与える影響
日々の食事で野菜をしっかり摂ることは、体の健康だけでなく、心の安定にも関係しています。特に野菜に含まれる食物繊維は、腸内環境を整える役割があり、腸と脳がつながっていることを考えると、とても大切な栄養素です。
腸に老廃物がたまりやすい状態が続くと、そこに有害な物質がとどまり、それが体内に吸収されてしまうことがあります。そうなると体のあちこちで炎症が起こりやすくなり、結果的に脳にも悪い影響が及ぶことがあるのです。
毎日の食事の中で、生野菜なら両手に軽く乗るくらい、加熱した野菜なら片手に乗るくらいを目安に摂るとよいでしょう。
また、穀物や豆類、海藻、きのこ類などにも食物繊維が多く含まれており、同時に心の健康に欠かせないビタミンやミネラルも摂取できます。葉酸やビタミンD、鉄分や亜鉛などの不足は気分の落ち込みと関係があるとも言われています。
サプリメントで補うこともありますが、基本的には食べ物から摂る方が安心です。食材そのものから得られる栄養は、体に無理なく吸収され、必要以上に摂りすぎることも防げます。
間食や夜食の習慣が心に与える影響
不規則な食生活もまた、心のバランスを崩しやすくする要因のひとつです。特に、朝食を抜いて間食や夜遅くの食事で空腹を満たす生活をしていると、栄養の偏りが生じやすくなります。
お腹が空いたときだけ何かを食べるというパターンや、ストレスを和らげるために間食をするという行動は、気づかないうちに体と心のリズムを乱してしまいます。
一日の食事の中でも、朝食は体内のリズムを整える大切な時間です。朝にしっかりと栄養を摂ることで、心身が目覚め、日中の集中力や気分の安定につながります。
また、日本食を中心にした食事スタイルは、野菜や魚、発酵食品が豊富で栄養バランスが整っており、心の健康に良い影響をもたらすことが多いとされています。迷ったときは、昔ながらの和食を取り入れることもおすすめです。
3食をなるべく決まった時間に、バランスよく摂ることを心がけるだけでも、体も心も安定しやすくなります。
まとめ
心の不調は、さまざまな要因が絡み合って起こります。その中でも、食生活は自分自身で見直しやすい大切な要素の一つです。
カロリーの摂りすぎ、甘いものへの依存、過度な飲酒、野菜不足、不規則な食事。これらはすべて、日々の暮らしの中で気づかぬうちに習慣化してしまうものばかりです。
だからこそ、少しずつでも意識を向けて、できるところから変えていくことが大切です。完璧でなくてもいいのです。昨日よりも今日、今日よりも明日と、無理のない範囲で取り組んでいくことが、心の回復や予防につながっていきます。
食べることは、自分を大切にすることでもあります。食生活を見直すことは、心に優しく寄り添う第一歩です。あなたが少しでも穏やかに過ごせる日々を重ねていけますように。