1円でも安く、を卒業するという選択
価格競争の先にあった“静かな貧困化”から抜け出すために
確かに安い。
確かに早い。
だからこそ、私たちは長いあいだ Amazon を使い続けてきました。
「町の本屋が消える」と言われ始めてから、気づけば20年近くが経ちました。
いまやネットスーパーやECサイトで最安値を探すと、ほぼ必ずAmazonに行き着く。
低価格と高速配送は、生活インフラと言っても過言ではありません。
しかし、その便利さの裏側で、私たちは別のものを静かに失ってきたのではないでしょうか。
安さを追い求めた結果、給料が上がらなくなった
「1円でも安いものを探す」
この行動は、個人単位では合理的です。
けれど、社会全体でそれが常態化すると、次のような循環が生まれます。
- みんなが1円でも安いものを探す
- 価格競争が激化する
- 企業は人件費を抑えざるを得なくなる
- 給料が上がらない、もしくは下がる
- 原材料価格が上がっても吸収できない
- 数を減らす、頻度を減らす、買い控える
こうして日本は、
デフレを長く経験したあとに、数字上のインフレと体感的な貧困が同時に存在する
という、歪んだ状態に入りました。
問題は「安さ」ではなく「流れ先」
もう一つ見逃せないのが、お金の行き先です。
Amazonをはじめとする巨大プラットフォームの多くは海外資本です。
私たちが「1円安いから」と選んだ消費の積み重ねは、
- 利益
- 税収
- データ
- 雇用機会
を、日本の外へ流し続けてきました。
目先の支出は減っても、
国内で循環するはずだったお金が減り、結果として自分たちの給料を押し下げる
そんな構造が出来上がってしまったのです。
「どこから安く買うか」から「誰から買いたいか」へ
これから必要なのは、
「最安値探し」をやめることではありません。
問いを変えることです。
- ✕ どこから一番安く買えるか
- ○ 誰から買えば、国内が少し潤うか
価格だけでなく、
応援したい人・企業・思想から買う
いわば「ファンビジネス的な消費行動」への転換です。
ただし、これは精神論では成り立ちません。
経済は、いきなり機首を上げると失速する
下降中の経済は、航空機と同じです。
いきなり機首を引き上げれば失速します。
まず必要なのは、
- 下降線を止める
- 水平飛行を保つ
- エンジンを吹かすための初速をつくる
という段階的なアプローチです。
給料が減り続ける状況のまま
「高くても国内から買おう」は、現実的ではありません。
タネ銭がない資本主義という矛盾
株式投資をしようにも、
そもそもタネ銭がない。
「資本主義」と呼ばれる社会なのに、
国民の多くが“資本”と呼べるものを持っていない
これは大きな矛盾です。
だからこそ、
- サラリーマン一択の人には
- 賃金を増やせる企業を優先的に支援する
- 内部留保に回さない約束ができる企業を評価する
- フリーランスには
- スキルに応じた簡単なタスク
- 隙間時間でできる仕事
- 小さく回るビジネス環境
こうした墜落を防ぐための下支えが先に必要になります。
ファンビジネスへの移行は「回復後」でいい
経済がある程度フラットになってからで構いません。
- 1円でも安いものを探す購買心理
- 数字だけの効率主義
ここから少しずつ、
- 応援したい相手
- 続いてほしいサービス
- 国内で循環する仕組み
を基準にした消費へ移行していく。
その結果、
- GAFA に一方通行で流れていたお金が
- 内需として循環し
- 国内経済は安定し、少なくともコントロールしやすくなる
行き過ぎたグローバル化も、自然と減速していくでしょう。
デジタル後進国だからこそ、伸びしろがある
そもそも日本は、
- 国産クラウド
- 国産SaaS
- 国産プラットフォーム
が育ちにくかった、デジタル後進国でもあります。
逆に言えば、
ここに本気でテコ入れできれば、V字回復の余地が残っている
とも言えます。
価格だけではない価値。
ファンとして支える経済。
国内で循環するデジタル基盤。
「1円でも安く」を卒業することは、
我慢ではなく、未来への投資なのかもしれません。
