突然、息がしづらくなったり、心臓がドキドキして止まらなかったり、身体が震えて立っていられないほどの恐怖に襲われたことはありませんか。何もないはずの場所で突然そんな症状に襲われると、自分に何が起こっているのかわからず、ますます不安が大きくなってしまいます。それは、もしかすると「パニック発作」かもしれません。この記事では、パニック発作が起きたときにどのように対処すればよいのか、実際に役立つ具体的な方法を丁寧に解説していきます。難しい言葉は使わず、できるだけわかりやすくお伝えしますので、同じような不安を抱えている方にもそっと寄り添えたらうれしいです。
パニック発作とはどんなものか
パニック発作というのは、ある日突然、強い不安や恐怖とともに、さまざまな身体の症状が一気に現れる状態を指します。たとえば、冷や汗が出たり、心臓が激しく打ったり、息が苦しくなったり、めまいやふらつき、手足の震え、胸の詰まりや吐き気などが生じます。中には、身体の感覚が麻痺するような感覚や、現実から引き離されたような感覚になることもあります。このような症状は、命に関わるような病気ではないとわかっていても、そのとき本人にはとても強い恐怖として感じられます。
すべての症状が一度に現れるわけではなく、人によってはそのうちの一部だけが出ることもあります。たとえば、心臓の鼓動だけが急に速くなる、呼吸が浅くなる、というように少しずつ出る場合もあります。そのため、自分がパニック発作を起こしていることにすぐには気づかない方もいるかもしれません。
まず大切なのは「いまパニック発作が起きている」と気づくこと
パニック発作の対処で最も大切なことの一つは、自分に今何が起こっているのかを自覚することです。強い不安や身体の異変が出たとき、「これはパニック発作かもしれない」と意識するだけで、状況への向き合い方が変わってきます。
この自覚によって、体の異変を「何か重大な病気が起きたのでは」という恐怖から、「これは一時的なものなんだ」という認識に変えることができます。それだけで、少しずつ落ち着きを取り戻すきっかけになります。すぐに怖さが消えるわけではありませんが、「大丈夫、これは命に関わるものではない」と心の中で唱えることは、とても大きな支えになります。
呼吸を整え、リラックスを促す工夫をする
パニック発作のときは、自律神経のバランスが崩れています。特に、緊張や不安、恐怖に反応して活発になる「交感神経」が強く働いてしまっている状態です。このとき、体は「危険が迫っている」と感じているので、呼吸が浅く早くなり、心拍数も上がります。
この反応を和らげるために必要なのは、もう一方の「副交感神経」を優位にすることです。副交感神経は、心身を落ち着かせたり、睡眠の準備を整えたりする働きをします。この働きを意識的に助ける方法として、深呼吸やお水を飲むことが勧められています。
深呼吸は、ゆっくりと鼻から息を吸い、口から細く長く吐くようにしてみてください。これを繰り返すことで、脳が「安心していい」というサインを受け取り、自律神経のバランスが整っていきます。また、コップ一杯のお水をゆっくり飲むことも、体を落ち着かせるのに役立ちます。お水を飲むというシンプルな行為自体が、思考を外に向けるきっかけとなり、体にとってもやさしい刺激になります。
薬のサポートを取り入れる場合について
不安の症状が頻繁に起こる方や、日常生活に支障が出るほど強いパニック発作がある方は、医師の診察を受けてお薬によるサポートを検討することも選択肢のひとつです。抗不安薬と呼ばれるお薬には、過剰に働きすぎた交感神経のバランスを整える作用があります。特に、ベンゾジアゼピン系と呼ばれるお薬は、副交感神経を刺激し、心身をリラックスさせる働きがあります。
発作が起きる前に予兆がある場合には、そのタイミングであらかじめ服用しておくことも効果的です。実際に発作が起きてしまった後でも、なるべく早く服用することで症状をやわらげることが期待できます。ただし、薬が効いてくるまでには少し時間がかかるため、服用したら安心して静かに過ごすようにしましょう。
また、お薬が効いてきたときには、急に気が抜けたように眠気やだるさを感じることもあります。これは、体が強い緊張から解放された反応のひとつです。お薬に頼りすぎることなく、自分に合った使い方を見つけていくことが大切です。
安心できるものを日常に取り入れておく
パニック発作は、予期しないタイミングで起きることが多いため、事前に自分にとって安心できるものを用意しておくこともひとつの工夫です。たとえば、気持ちが落ち着く香りのハンカチを持ち歩く、お気に入りの音楽をスマートフォンに入れておく、自分を安心させてくれる動画をすぐに再生できるようにしておくなど、心を外の世界につなぐアイテムがあるだけで、状況に飲み込まれにくくなります。
ある方は、心がほっとする香水を用意しておき、外出時や電車の中などで発作の予感を感じたらすぐにその香りをかぐようにしているそうです。香りは脳に直接働きかけるため、気分を切り替える手助けになります。
また、見ているだけで心がゆるむようなキャラクターや映像などを携帯しておくのも、思った以上に効果があります。笑顔になれるきっかけを、日常のなかに用意しておくことは、心のセーフティネットをつくることにつながります。
周囲とのつながりを大切にする
一人で抱え込まず、少しでも気になる症状があれば信頼できる人に話してみてください。それが家族であれ、友人であれ、専門のカウンセラーや医療者であれ、「話す」という行為が大きな安心感につながります。パニック発作は、珍しいものではありません。同じような経験をした人も、実は多くいるのです。
自分だけが苦しんでいるわけではないという感覚を持てることが、回復への第一歩になります。他の人の工夫や経験談が、思いがけず自分の助けになることもありますし、逆にあなたの経験が誰かの助けになることもあります。
まとめ
パニック発作はとてもつらい体験ですが、適切な対処法を知っておくことで、その不安はやわらげることができます。大切なのは、発作が起きたときに「自分は今、パニック発作を起こしているんだ」と冷静に自覚すること。そして、深呼吸をしたり水を飲んだりして副交感神経の働きを促すことで、体を落ち着かせることが可能になります。
必要に応じて医師に相談し、薬の力を借りることも有効です。さらに、安心できるアイテムを日常に取り入れることで、発作への備えが整います。なによりも、自分を責めることなく、やさしく寄り添いながら過ごすことが大切です。
もし同じような体験をしている方が周りにいたら、この記事が少しでもその方の安心につながればと願っています。そして、あなた自身が「大丈夫」と思える時間が少しずつ増えていきますように。