うつ病の回復を妨げるやってはいけない5つのNG行動

メンタル
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うつ病と向き合うことは、とても繊細で大切な時間です。少しずつでも元気を取り戻したい、回復への道を歩みたいと願いながらも、知らず知らずのうちに逆効果になる行動をとってしまうことがあります。気持ちが沈んでいるときほど、「これをやらなければ」と自分に厳しくしてしまったり、「何か変えなくては」と焦ってしまったりすることもあるかもしれません。

この文章では、うつ病の療養中に避けたほうがいい五つの行動について、わかりやすくやさしい言葉でお伝えしていきます。心と身体が疲れているときに大切にしてほしい考え方や、回復の妨げになりやすい落とし穴について、一つずつ丁寧に解説します。どれも専門的な知識に基づいた内容ですが、やさしく伝えられるように配慮していますので、ご自身の状態や心にそっと寄り添うつもりで読んでみてください。

無理な朝の習慣をやめることの大切さ

よく「朝の散歩は心に良い」と聞いたことがあるかもしれません。確かに、外の光を浴びて身体を動かすことは、うつ病の回復にとってプラスに働くことがあります。ただ、それはある程度元気が戻ってきたタイミングでの話です。

心が疲れている初期の段階では、身体の中で活力を生み出す働きが弱まっており、そもそもエネルギーを使う余力があまりありません。そんな状態で「毎朝歩かないとダメ」「動かないとよくならない」と自分を追い込んでしまうと、かえって残っているわずかなエネルギーすら消耗してしまい、さらに落ち込んだ気持ちが強くなってしまうことがあります。

回復に向かうためには、「やらなければならない」という考えから少し離れてみることも、とても大切なことです。無理に頑張ろうとするのではなく、まずは心と身体が求めている「休息」を優先すること。元気を充電する時間と考えて、何もしないでゆっくり過ごすことを自分に許してあげる。そうした柔らかな姿勢が、自然な回復への第一歩になります。

もちろん、もう少し気力が戻ってきた段階では、朝の散歩や軽い運動が回復を助けてくれることもあります。ただし、そのときは「やりたい」という気持ちが自然にわいてくるのを待つことが大切です。

反省よりも、今を休ませることが必要なとき

うつの状態になると、「どうしてこんなふうになってしまったのだろう」と原因を探したくなったり、「自分がもっと強ければ」と過去を責めたくなったりすることがあるかもしれません。けれど、心が深く疲れているときに自分を責めることは、さらに傷を深めてしまうだけです。

うつ病は、心の弱さや性格の問題ではありません。脳の働きに変化が起こり、物事を正しく判断する力や前向きに考える力が一時的に落ちてしまっている状態なのです。そんなときに「なぜこうなったのか」を考えても、冷静な答えにはたどり着きにくく、むしろ「全部自分が悪かったんだ」と思い込んでしまいがちです。

実際には、疲れやストレスが少しずつ積み重なった結果、心と身体が限界を知らせてくれているサインでもあります。それなのに、自分を責め続けてしまうと、さらに深い自己否定や無力感に陥り、生きる気力そのものが失われてしまうこともあるのです。

だからこそ、今は反省よりも「しっかり休むこと」に集中する時間です。未来のことを考えられる余裕が出てきたときに、少しずつ「これからはどうしていこうか」と前向きに見つめ直すことができれば、それで充分です。今はまず、自分を責めず、いたわる時間にしていきましょう。

楽しいことさえ、疲れになる時期もある

うつ病の回復を目指すとき、「気分転換が必要」と思って、旅行やイベントなどにチャレンジしようとする方もいるかもしれません。けれど、うつ状態が深い時期には、そういった行動も思った以上に心身の負担になることがあります。

本来、気分転換がうまくいくときというのは、ある程度の元気があって「何かやってみようかな」という気持ちが芽生えているときです。しかし、うつのときにはそもそもその「元気のもと」が足りていません。そのため、外出したり、誰かと過ごしたりといった行動をとることで、少し残っていた力さえ使い果たしてしまうことがあるのです。

また、「楽しめなかった自分」に対してがっかりしたり、「前はあんなに好きだったのに、もう何も感じない」と思ってしまったりして、自分への失望が強まってしまうこともあります。すると、「自分はもう何も楽しめない人間になってしまった」という極端な考えにとらわれてしまう可能性も出てきます。

無理に外の世界に気を向けるよりも、まずは自分の内側の小さな変化に目を向けてみましょう。たとえば、少し気分が落ち着いた、少し眠れるようになった、そういったほんのわずかな変化でも、それは大きな回復のサインです。気晴らしをしたいと自然に感じられるようになったら、そのときに少しずつ始めていけばよいのです。

重大な決断は「保留」にする勇気を持とう

うつ病の渦中では、今の苦しさから抜け出したくて、「引っ越したい」「仕事を辞めたい」「関係を終わらせたい」といった大きな決断をしたくなることがあります。しかし、うつの状態では物事のとらえ方がいつもと違ってしまっていて、冷静な判断がしづらいのが現実です。

「この場所にいるから苦しい」「あの人のせいでつらい」というように、原因を外に求めたくなるのは自然な感情ですが、それは一時的な脳の働きの変化によって生まれていることもあります。後から振り返ってみると、「あのときは気づけなかったけれど、あの仕事には意味があった」と感じたり、「離れたくなかった人だった」と思うこともあります。

人生の大きな選択は、心が落ち着いてからでも遅くはありません。今は「決めない」という選択をしてもいいのです。どうしても迷ってしまうときは、一人で抱え込まず、信頼できる人や専門家と一緒に話し合いながら考えていくことが大切です。

薬の自己判断中止は大きなリスクに

治療を受けている中で、「もう薬は必要ないかもしれない」と思うことがあるかもしれません。また逆に、「こんなに薬を飲んでも良くならないのなら、いっそやめてしまおう」と感じてしまうこともあるでしょう。しかし、自己判断で薬を中止することは、回復を大きく妨げてしまう恐れがあります。

症状が落ち着いたように感じても、実際にはまだ回復の途中であることが多く、見えないところで再発のリスクが潜んでいます。また、症状が改善しないように思えるときも、それは治療の経過の一部であって、薬が合っていないという判断は専門家に任せるべきです。

ときには家族や職場の人、SNSなどから「薬なんてやめたほうがいい」といった声が耳に入ることもあります。けれど、その人たちはあなたの病気の詳細までは知りませんし、医療の専門家ではありません。薬の調整や終了のタイミングは、必ず医師と相談して決めるのが安全です。

まとめ

うつ病の回復に向かう道のりは、焦らず、無理をせず、自分の心にやさしく寄り添うことが何より大切です。頑張りすぎないこと、考えすぎないこと、そして自分に厳しくしないこと。そのどれもが、回復への大事な支えになります。

無理な習慣や過度な反省、エネルギーを奪う気晴らしや人生を左右するような大きな決断、そして薬の自己判断による中止。これらはどれも、心と身体が弱っているときには避けたほうがよい選択です。

今はただ、少しずつでいいのです。休むことを許し、何もしない時間を大切にして、自分をねぎらうことから始めてみてください。回復のきざしは、必ずどこかに芽生えていきます。あなたのペースで、安心できる歩みを続けていけますように。

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