※この記事は2026年9月4日時点の情報をもとにしています。
つい最近まで、スーパーに米がない、高すぎて買えないと騒いでいた「令和の米騒動」。
ところが2026年秋、その状況が驚くほどの勢いで逆転しています。
今度はなんと、去年収穫された2025年産米より、収穫したばかりの2026年産新米のほうが安いという現象まで起き始めました。
消費者として考えれば答えは簡単です。
「新しくて、しかも安いなら新米を買おう」
当然だと思います。
ただ、少し長い時間軸で考えると、私はここにちょっと怖さを感じています。
今の安さだけを追い続けた結果、数年後には日本で米を作る人そのものが減り、再び「米がない」「高くて買えない」という世界に戻ってしまわないでしょうか。
そこで今回は、家計に余裕がある人にひとつ提案したいと思います。
可能な人は、あえて2025年産のお米を買って食べてみませんか?
これは寄付ではありません。
普通にご飯として食べながら、日本の米の在庫を循環させる「応援購入」です。
- ついに新米より前年産米のほうが高くなった
- 安い新米を買うことは、もちろん悪くない
- 全員が新米を選ぶと何が起きる?
- これは「合成の誤謬」に少し似ている
- すでに2025年産米を赤字で処分する卸業者も
- 2027年には米が余る可能性もある
- しかし米は「安ければ安いほどいい」商品ではない
- 米を作るコストも決して安くない
- だから、可能な人は2025年産米を「応援購入」してはどうだろう
- 農家を直接応援したいなら「誰から買うか」も重要
- 「買いだめ」ではなく「食べて減らす」
- 2025年産だから「まずい米」というわけでもない
- 飲食店や社員食堂こそ前年産米と相性がいいかもしれない
- 「高い米を買え」という精神論にはしたくない
- 目先の500円と、5年後の米価格
- 令和の米騒動から学ぶべきこと
- まとめ:余裕のある人は「去年のお米ください」と言ってみよう
- 参考資料
ついに新米より前年産米のほうが高くなった
2026年9月4日、かなり象徴的なニュースが報じられました。
横浜市内のスーパーで販売されていた千葉県産「ふさおとめ」は、
| 千葉県産ふさおとめ 5kg | 税込価格 |
|---|---|
| 2025年産 | 3,014円 |
| 2026年産・新米 | 2,474円 |
という状態になっていました。
同じ産地、同じ銘柄なのに、新米のほうが540円も安いのです。
スーパー側も困っています。
普通に両方を並べれば、多くの消費者は当然2,474円の新米を選びます。
そのため、この店舗では前年産のふさおとめが売り切れるまで、安い新米を店頭に出せないという異例の状況になっていました。
千葉県内では、新米ふさおとめが税抜1,950円、新米コシヒカリが税抜2,180円という販売例まで登場しています。
そして9月4日に報じられた全国スーパーの米平均価格も、5kgあたり3,112円。
3週連続の値下がりです。
少し前まで「米5kgが4,000円を超えた」と騒いでいたのが嘘のような変化です。
令和の米騒動については、こちらの記事でも最新状況をまとめています。
【令和の米騒動】新米30キロの値段相場・2026年最新版はこちら
安い新米を買うことは、もちろん悪くない
最初に明確にしておきたいことがあります。
安い新米を買う消費者が悪いわけではありません。
物価高が続き、食費を抑えたい家庭もたくさんあります。
同じ米なら、
- 新しい
- おいしい
- しかも500円安い
となれば、新米を選ぶのは完全に合理的です。
家計が厳しい人には、私は普通に安いほうを買ってほしいと思います。
問題は「一人ひとりにとって合理的な行動を、全員が一斉に行ったとき何が起きるか」です。
全員が新米を選ぶと何が起きる?
2025年産米は、米価が高騰していた時期に仕入れられたものが大量に流通在庫として残っています。
そこへ、それより安い2026年産新米が入ってきました。
安い新米が入荷 ↓ 消費者は新米を選ぶ ↓ 2025年産米が売れない ↓ 前年産米を値下げして処分 ↓ 安い前年産米と新米が競争 ↓ 新米も値下げしないと売れない ↓ 米価全体に下落圧力 ↓ 農家の収入にも影響 ↓ 翌年以降の作付けを減らす ↓ 将来の米生産量が減少 ↓ 数年後に再び米不足?
もちろん、必ずこの通りになるとは限りません。
輸出、加工用米への転換、政府の政策、備蓄、天候、需要の変化などによって需給は変わります。
ただし、価格が下がりすぎて生産を続けられない農家が増えれば、長期的な供給力が落ちるという基本構造は変わりません。
これは「合成の誤謬」に少し似ている
経済学には「合成の誤謬」という考え方があります。
一人にとって正しい行動でも、全員が同じ行動をすると、社会全体では望ましくない結果になることがあります。
たとえば不景気だから一人が節約するのは正しい。
しかし全員が同時に節約すれば、企業の売上が減り、給料が減り、さらに不景気になることがあります。
今回のお米も少し似ています。
「新米のほうが安いから新米を買う」
これは個人にとって正しい。
でも全員が一斉にそれを行えば、前年産米だけが大量に残り、値崩れが新米にも波及する可能性があります。
そして最終的に生産者まで苦しくなれば、数年後の私たち自身に返ってきます。
すでに2025年産米を赤字で処分する卸業者も
これはまだ机上の話だけではありません。
千葉県の米卸業者では、2026年6月時点で約400トン残っていた2025年産米を、その後約50トンまで減らしたと報じられています。
一見すると「350トン売れたのでよかった」と思います。
しかし実際には、仕入れ価格を下回る赤字販売だったといいます。
2025年の米不足時には高値で米を確保しなければ商品を用意できませんでした。
ところが一年後には、今度はその高く仕入れた米が売れない。
令和の米騒動の裏側では、こんな逆転まで起きています。
2027年には米が余る可能性もある
農林水産省が2026年9月2日に示した需給見通しでは、2026年産の主食用米生産量は735万~754万トン。
そして2027年6月末の民間在庫は、246万~283万トンになると見込まれています。
取引関係者の間で適正水準と認識されている180万~200万トンを大きく上回る数字です。
つまり現在は、
2024~2025年 米が足りない ↓ 2026~2027年 米が余るかもしれない
という180度違う問題へ向かっています。
しかし米は「安ければ安いほどいい」商品ではない
消費者としては、もちろん安いほうがありがたいです。
私だって同じ商品なら安いほうを買いたくなります。
ただ、日本の主食である米には普通の商品とは少し違う性質があります。
国内で作れなくなってから、やっぱり必要だったと言っても、すぐには元に戻せないからです。
田んぼが荒れたり、農機具を処分したり、農家が高齢化して離農したあとで、価格が上がったから来年から大量生産してくださいと言っても簡単ではありません。
食料安全保障という意味でも、ある程度の国内生産能力を維持することには価値があります。
米を作るコストも決して安くない
2026年4月には、食料システム法に基づく初めての「米のコスト指標」も公表されました。
そこで示された生産段階のコストは、玄米60kgあたり20,535円。
さらに生産、集荷、卸、小売までを積み上げると、精米5kg換算で2,816円です。
しかも、この2,816円には各事業者の利潤は含まれていません。
もちろん、これは全国すべての農家に当てはまる「最低価格」ではありません。
大規模農家ならもっと低コストで作れることもありますし、地域や品種によって条件も違います。
それでも、米を持続的に届けるためには、肥料、農薬、農機具、労働、輸送、精米、保管、小売など、それなりの費用が必要なのは間違いありません。
「5kgが安ければ安いほど日本のためになる」と単純には言えない理由がここにあります。
だから、可能な人は2025年産米を「応援購入」してはどうだろう
そこで私が提案したいのが、2025年産米の応援購入です。
別に募金をする必要はありません。
普通に食べる米を買うときに、
「新米じゃなくてもいいから、今回は2025年産を食べよう」
と選ぶだけです。
たとえば新米2,500円、前年産3,000円なら差額は500円です。
もちろん、その500円が大きい家庭は新米を買えばいい。
一方、月に数百円程度の差なら負担できるという人は、あえて2025年産を選ぶ。
そんな緩い応援で十分だと思います。
農家を直接応援したいなら「誰から買うか」も重要
ただし、「2025年産米を買えば、その代金がそのまま農家に入る」という意味ではありません。
一般的な流通では、
農家 ↓ JA・集荷業者 ↓ 卸売業者 ↓ スーパー ↓ 消費者
という流れがあります。
すでにスーパーや卸が買い取っている米なら、スーパーで前年産米を買ったからといって、その売上が直接農家へ追加で支払われるわけではありません。
農家を直接応援したいのであれば、私は次の順番で探してみるのがおすすめです。
① 農家直売の2025年産米
農家自身が前年産米を販売しているなら、もっとも直接的な応援になります。
農家のネットショップ、直売、道の駅などで探してみるとよいでしょう。
② JAや産地直売所の2025年産米
産地側に残っている在庫の消化につながります。
販売方式によって農家への精算方法は異なりますが、地域の米を選ぶという意味でも分かりやすい方法です。
③ スーパーの2025年産米
これは農家への直接的な支払いにはなりにくいものの、十分意味があります。
卸や小売に残っている高値仕入れの前年産在庫を減らすことで、投げ売り圧力を少し弱めることができます。
流通のどこかが大量の赤字を抱え続ける市場も、長期的には健全とはいえません。
「買いだめ」ではなく「食べて減らす」
ここで間違えたくないのは、また米を大量に買い占めようという話ではありません。
2025年の米騒動では、
「米がなくなる前に確保しよう」
という心理から家庭内在庫まで増えました。
今回は逆です。
「前年産米を普通に食べて、市場の在庫を循環させよう」
という話です。
必要以上に30kg、60kgと抱え込んだら、結局は家庭の倉庫へ在庫を移しただけになってしまいます。
普段食べる量を、普通のペースで前年産米に置き換える。
それくらいで十分です。
2025年産だから「まずい米」というわけでもない
ここでは分かりやすく「古米」と呼ぶこともありますが、今回対象にしているのは何年も前の備蓄米ではなく、基本的には2025年に収穫された前年産米です。
適切に低温管理されていた米なら、普通に日常のご飯として食べられます。
むしろ、用途によっては水分量の少ない前年産米が合う料理もあります。
- チャーハン
- カレー
- 丼もの
- 寿司
- 炊き込みご飯
など、新米でなければ困る料理ばかりではありません。
飲食店や社員食堂こそ前年産米と相性がいいかもしれない
個人だけでなく、まとまった量の米を使う事業者にも前年産米という選択肢があります。
- 飲食店
- 社員食堂
- 学校や施設の給食
- 弁当店
- 食品加工
もちろん価格や品質、契約条件が合うことが前提ですが、新米である必要のない用途へ前年産米を回せれば、大量の在庫を社会全体で消費できます。
農林水産省も現在、令和7年産の民間在庫について、長期的な販売や加工用、輸出用などへの販売促進を進めています。
「高い米を買え」という精神論にはしたくない
ここはとても重要です。
私は、
「日本の農業を守るために、みんな高い米を買うべきだ」
という話にはしたくありません。
それでは食費に困っている家庭へ負担を押し付けるだけです。
安い米が必要な人は、安い新米を買えばいい。
その一方で、
「自分は500円くらい高くても大丈夫だから、今回は去年のお米にしておこう」
という人が少し存在するだけでも、市場の動きは変わります。
全員に強制するのではなく、余裕のある人が少し多めに支える。
それくらいが現実的ではないでしょうか。
目先の500円と、5年後の米価格
新米2,500円と前年産3,000円が並んでいたら、500円安い新米を選びたくなります。
しかし、私たちが本当に欲しいのは「今年だけ安い米」でしょうか。
おそらく違います。
本当に欲しいのは、
- 来年も
- 5年後も
- 10年後も
普通の値段で普通に買える米ではないでしょうか。
そのためには、消費者だけが得をする価格でも、農家だけが得をする価格でもなく、
「作り続けられて、買い続けられる価格」
を探していく必要があります。
令和の米騒動から学ぶべきこと
2025年、私たちは米が店から消える経験をしました。
そのときは、多少高くても米を売ってほしいと思った人も多かったはずです。
それからわずか一年。
今度は、
「新米が安いから、去年の米が売れない」
という正反対の問題が起きています。
米不足のときだけ農家に「もっと作ってほしい」とお願いし、米が余った瞬間に「もっと安く」と言う。
それを繰り返していたら、生産者側も安心して米作りを続けることができません。
まとめ:余裕のある人は「去年のお米ください」と言ってみよう
2026年9月、日本の米市場では新米と前年産米の価格が逆転するという異例の現象が起きています。
- 全国スーパーの平均価格は5kg 3,112円まで下落
- 同一産地・同一銘柄で新米が前年産より540円安い例も発生
- 2026年産主食用米は735万~754万トンの見通し
- 2027年6月末在庫は246万~283万トンになる可能性
- 適正とされる在庫水準180万~200万トンを大きく上回る可能性がある
短期的には、米が安くなることは消費者にとって朗報です。
しかし価格が急激に下がり、生産者が米を作り続けられなくなれば、何年か後に再び不足と高騰が起きる可能性があります。
だから私は、家計に余裕がある人にはひとつの選択肢として、
「新米じゃなくて大丈夫です。2025年産のお米をください」
と言ってみることをおすすめしたいです。
大げさな運動にする必要はありません。
安い新米を必要とする人には、安い新米が行く。
新米にこだわらない人は、前年産を食べる。
農家を直接応援したい人は、農家や産地から前年産米を買う。
そうやって需要を少し分散できれば、急激な値崩れを和らげる助けになるかもしれません。
令和の米騒動で私たちは、米は「いつでも当たり前にある商品」ではないということを一度経験しました。
今年数百円安く買うことだけでなく、5年後、10年後も普通に国産米を食べられること。
そんな視点で、お米売り場を見てみてもいいのではないでしょうか。
参考資料
- 農林水産省「食料・農業・農村政策審議会 食糧部会」2026年9月2日
- 農林水産省「令和8年9月4日 鈴木農林水産大臣記者会見」
- 農林水産省「米のコスト指標」2026年4月7日公表
- 公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構「米のコスト指標」
- テレビ朝日「新米が古米より安い コメ“逆転現象”の異例事態」2026年9月4日
