最近、その独特の形状から愛好家が増えてきているというタンクブロメリアという植物があります。葉と葉の間に水をためることができるよう、少し変わった形状をしているのが特徴です。そんなタンクブロメリアの育て方や手入れ方法、増やし方、手に入れやすい種類などをご紹介します。
タンクブロメリアとは?特徴と魅力
タンクブロメリアは、中心部分と葉と葉の間に水を溜めることができるブロメリア科の植物です。原産地は中南米で、雲霧林やジャングル、岩場などに自生しています。その名の通り、葉の構造が筒状になっていて、中心部と葉と葉の隙間に水を貯めるという、まさにタンク状の個性的な姿をしています。
タンクブロメリアの大きさは幅広く、10cm程度しかないものや1mを軽く超える超大型種まであります。特徴的な立ち姿と個性的な葉のスポットが素敵で、特に縞模様の品種は自然の不思議さと美しさを感じさせてくれます。
主に葉を観賞する植物ですが、花も素敵な品種が多いのも特徴です。育てていると株元から新しい株が生まれることがあり、その可愛らしい姿も魅力の一つです。
タンクブロメリアは、一般的な観葉植物よりも水やりの目安が分かりやすいのが特徴です。水やりを失敗しがちな方や、観葉植物の育て方に自信がない方にもおすすめの植物です。
タンクブロメリアの基本的な育て方
日当たりと置き場所
タンクブロメリアは、日当たりを好む植物です。できるだけ日当たりの良い場所、明るい場所に置きましょう。4月~10月は屋外で育てても大丈夫です。ただし、夏の強い光に当てると日焼けするので、夏だけは半日陰の場所に置くのがおすすめです。
屋内で育てる場合は、明るい窓辺や日差しが射し込むような場所が適しています。ただし、直射日光は葉が焼けてしまう可能性があるので注意が必要です。室内なら、レースカーテン越しの光が入る場所、戸外なら、直射日光のあたらない明るい日陰において育てるとよいでしょう。
硬葉系のタンクブロメリアは、光が少ないと色がくすんでしまうことがありますが、逆に強すぎても緑色が強く出てしまうので、その品種の葉色が一番キレイに出てくれる場所を探すとよいでしょう。軟葉系はやや育て方も難しくなり、こちらは硬葉系よりも強い光を避けて管理します。
季節によって大きく違いがありますが、理想的な環境は午前中から昼過ぎまでは直射日光に当たり、その後夕方までは明るい日陰で管理することです。原則として梅雨明けから遮光をします。重要なのは決して西日には当てないことです。
水やりの方法と頻度
タンクブロメリアの水やりは、他の植物とは少し異なります。他の植物のように土に水をあげても吸収できないので注意が必要です。
タンクブロメリアに水をあげる場所は、株元の筒状になっている部分に溜めるようにして与えます。タンクブロメリアの株の上から、溜まっている水が入れ替わるくらいたっぷり水を与えましょう。鉢の下から、水が少し出ているぐらいが良いです。
株の上から与えることにより、ほこりも一緒に洗い流せます。タンクブロメリアは、水を好むので生育期には、用土が乾いたら葉の筒の上から十分に水をやります。
葉から養水分を吸収する能力を持っているので、葉筒にも水を貯えます。ただし、冬はタンクブロメリアの葉筒に水を貯めないようにし、水やりもやや控えめにします。水のやり過ぎは根腐れの原因になりますので注意が必要です。
タンクブロメリアは、乾燥には強い植物ですから、冬は2、3週間くらい水をやらなくても枯れません。乾燥には強く、空気中の湿度が高い環境を好みます。
タンクブロメリアの葉が丸まってきたら水が足りないというサインですのですぐに水やりを行います。通常は、1週間に1回程度水を入れ替えるように与えます。乾燥する時期は霧吹きで水をかけてあげてもいいでしょう。
秋からはタンクブロメリアを一度逆さまにして水を出し、ほんのわずかに水が残る程度にしましょう。タンクブロメリアの冬越しは、半月に一回程度の水やりで充分です。冬の水やりは、午前中が最適です。
また、温度が低くなるような環境では水をあまり与えない方がタンクブロメリアを長く楽しめます。
適した温度と湿度
タンクブロメリアは、高温多湿な環境を好みます。耐寒性はかなり強く、室内なら容易に越冬できます。
タンクブロメリアの生育は20℃~30℃が適温で、冬場でも10℃以上あるのがいいとされています。2~3℃程度の寒さでも冬越しができる強い品種もありますが、冬場はなるべく室内に置いてあげましょう。
最低気温が10℃を下回ってきたら、室内の窓辺など暖かい場所に移動しましょう。もし室内に入れることが難しい場合は、住んでいる地域にもよりますが、簡易温室などに入れて昼間の温度を高めにし、雨風が当たらないようにすると冷害対策になります。
また、地面付近は気温が低く霜などの影響も出やすいので、直置きせずに少し高めの場所に置くとより良いです。
土と植え付け
タンクブロメリアの用土は、水はけの良いものを使うのが一般的です。シンビジウムなど洋ラン用培養土や多肉植物用培養土など、水はけと通気性のよい用土が適します。
自分で配合するなら、いずれも小粒の赤玉土6、鹿沼土2、軽石2などがよいでしょう。また、軽石中粒と硬質赤玉中粒を半々、そこに少量のピートモスとくん炭を混ぜ込んだものをプラ鉢で使用するのもおすすめです。素焼き鉢の場合はピートモスを多めにします。
植え替えは、株が成長して鉢とのバランスが悪くなったら、5月から9月に、一~二回り大きい鉢に植え替えます。古い用土を落とし、新しい用土で植えます。鉢はやや小さめのものが適します。安定が悪いので、転倒防止の対策をしたほうがよいでしょう。
根の成長はゆっくりなので、植え込む鉢は小さめが適しています。大きめだと用土の量が多くなり、水が乾くスピードが遅くなります。そして結果的にそれが、根腐れの原因となってしまいます。
また、用土がなくても育てられるので、根を水苔で巻いて着生蘭のように流木に括りつけると、また違った表情で楽しむことができ、吊り下げて飾ることもできます。
タンクブロメリアの種類と特徴
タンクブロメリアには様々な種類がありますが、大きく分けて硬葉系と軟葉系に分類されます。それぞれの特徴と代表的な品種をご紹介します。
硬葉系タンクブロメリア
硬葉系タンクブロメリアは、名前の通り葉が硬く、比較的丈夫で育てやすい品種が多いです。初心者の方にもおすすめです。
ネオレゲリア属
ネオレゲリアは葉の硬い硬葉系タンクブロメリアで、葉の模様が美しいものが多くグズマニア同様に園芸店などによく置かれています。グズマニアは花茎が伸びましたが、ネオレゲリアは花茎が伸びないため開花に気づかないことがあります。性質としては強健でタンクブロメリアの入門種としてもおすすめです。
ビルベルギア属
ビルベルギアはツツアナナスとも呼ばれている硬葉系タンクブロメリアです。その名の通り筒状のスラっとした見た目をしており、スポットと呼ばれる葉の模様が美しいタンクブロメリアになります。交配種が多く作出されており、評価の高い交配種を生み出しているドミンゴスマルティンスなどは希少で高値で取引されていますが、実生などで繁殖されたものがほとんどです。
ホヘンベルギア属
ホヘンベルギアはずんぐりとした壺型の草姿に葉にノコギリのような葉がかっこよく熱心な愛好家が多いタンクブロメリアになります。生長が遅いため流通量が少なく、希少価値は高いですが、非常に強健なため育てやすいタンクブロメリアと言えます。
代表的な品種としては、ホヘンベルギア・レオポルドホルスティーがあります。レオポルドホルスティーはホヘンベルギアの定番品種で、非常に人気の高い品種になります。レッドフォームやダンクローンなど変種や選抜種が数種類あります。
軟葉系タンクブロメリア
軟葉系タンクブロメリアは、葉が柔らかく、繊細な美しさを持つ品種が多いです。硬葉系に比べてやや育て方が難しいですが、その美しさは格別です。
グズマニア属
グズマニアは昔からある葉が軟らかい、軟葉系タンクブロメリアで開花時の姿が綺麗なため人気があります。開花期である夏頃になると園芸店や花屋でよく売られています。赤やピンク、黄色に染まっている部分は花ではなく、花を包んでいる花苞と呼ばれる部分です。
品種によってはエアプランツとの区別が難しく、エアプランツと思って育て、咲いたらグズマニアだったということもあります。グズマニアは花が咲いていないと非常に地味なようですが、葉を楽しみつつ花が咲いた時の美しさは格別です。
フリーセア属
フリーセアはインコアナナスとも呼ばれる軟葉系タンクブロメリアで、葉模様や葉色が美しいものが多く、エアプランツ同様にエアータイプとタンクタイプが混在しています。また、花を観賞するタイプと、葉を観賞するタイプに分かれており、葉を観賞するタイプは特に人気があります。
ラシナエア属
ラシナエア属は標高が高く、高湿度の雲霧林に自生しています。また、極端に高温が苦手だったり低温が苦手だったりするので管理が難しいタンクブロメリアになります。しかしながら草姿は非常に魅力的なため、ブロメリア好きならば誰もが通る門だと言われています。ただし、その管理の難しさから流通量は極端に少ないです。
季節ごとの管理方法
タンクブロメリアの管理方法は季節によって異なります。それぞれの季節に合わせた適切な管理を行うことで、健康的で美しいタンクブロメリアを育てることができます。
春夏の管理
春から夏にかけては、タンクブロメリアの成長が最も活発になる時期です。この時期は以下のポイントに注意して管理しましょう。
まず、日光の管理です。春は徐々に日光の強さが増していくので、タンクブロメリアを少しずつ日光に慣らしていきましょう。徐々に日光に当てる時間を増やしていくことで、タンクブロメリアが日光に順応できるようになります。
水やりは、気温が上がるにつれて頻度を増やしていきます。週に1〜2回程度、タンクの中の水が減ってきたら、新しい水に入れ替えるようにしましょう。ただし、水をやりすぎないよう注意が必要です。タンクの中に水が溜まっている状態が適切です。
肥料は、春から夏にかけて月に1〜2回程度、薄めの液体肥料を与えるとよいでしょう。タンクブロメリアは肥料をあまり必要としない植物ですが、適度な栄養補給は成長を促進します。
また、この時期は病害虫の発生にも注意が必要です。特にアブラムシやカイガラムシなどが発生しやすいので、定期的に葉の裏側や株元をチェックしましょう。発見したら早めに対処することが大切です。
秋冬の管理
秋から冬にかけては、タンクブロメリアの成長が緩やかになる時期です。この時期の管理のポイントは以下の通りです。
まず、日光の管理です。秋は徐々に日光が弱くなっていくので、タンクブロメリアを少しずつ日陰に移動させていきます。冬は室内の明るい場所で管理するのが理想的です。窓際などの日当たりの良い場所がおすすめですが、暖房の風が直接当たらないよう注意しましょう。
水やりは、気温が下がるにつれて頻度を減らしていきます。週に1回程度、もしくは2週間に1回程度になることもあります。タンクの中の水が完全に乾かないよう注意しつつ、水のやりすぎにも気をつけましょう。冬は特に根腐れのリスクが高くなるので、水管理には十分注意が必要です。
肥料は、秋以降は控えめにします。成長が緩やかになる時期なので、肥料を与えすぎると根を痛める可能性があります。冬は基本的に肥料は必要ありません。
温度管理も重要です。タンクブロメリアは寒さに弱い植物なので、最低気温が10℃を下回らないようにしましょう。寒い地域では室内で管理し、暖房を使用する場合は乾燥対策として霧吹きで葉に水をかけるなどの工夫が必要です。
タンクブロメリアの増やし方
タンクブロメリアは、主に2つの方法で増やすことができます。一つは種からの育て方、もう一つは株分けによる増やし方です。
種からの育て方
タンクブロメリアを種から育てるのは、少し時間がかかりますが、新しい個体を多く得られる方法です。以下の手順で行います。
- 種を入手したら、水で湿らせたピートモスや水苔の上にまきます。
- 温度は20〜25℃程度、湿度は高めに保ちます。
- 発芽までは1〜2週間ほどかかります。
- 発芽後、本葉が2〜3枚出たら、小さな鉢に植え替えます。
- その後は通常の管理を行い、成長を見守ります。
種からの育成は時間がかかりますが、多くの株を得られる利点があります。また、稀少品種や交配種を育てる場合にも適しています。
株分けによる増やし方
株分けは、親株から子株(オフセット)を分離して新しい株を作る方法です。以下の手順で行います。
- 親株の根元に子株が発生するのを待ちます。
- 子株が親株の1/3程度の大きさになったら、株分けの時期です。
- 親株ごと鉢から抜き、子株を丁寧に分離します。
- 分離した子株は、水はけの良い用土に植え付けます。
- 植え付け後は、通常の管理を行います。
株分けは比較的簡単で、親株と同じ特性を持つ株を得られる利点があります。また、親株の管理にもなるので、一石二鳥の方法と言えます。
タンクブロメリアの病害虫対策
タンクブロメリアは比較的丈夫な植物ですが、いくつかの病害虫には注意が必要です。主な病害虫とその対策を紹介します。
まず、最も注意すべきは根腐れです。水はけの悪い土や水のやりすぎが原因で発生します。予防には、適切な水管理と通気性の良い用土を使用することが大切です。根腐れの兆候が見られたら、すぐに株を抜いて健康な部分だけを残し、新しい用土に植え直します。
次に気をつけたいのが、アブラムシやカイガラムシなどの害虫です。これらの虫は、葉の裏側や株元に発生しやすいです。定期的に株全体をチェックし、発見したら早めに対処しましょう。軽度の場合は水で洗い流すだけでも効果がありますが、ひどい場合は園芸用の殺虫剤を使用します。
また、高温多湿の環境では、カビや菌類による病気にも注意が必要です。通気性を良くし、葉や株元に水が溜まらないようにすることで予防できます。
初心者におすすめのタンクブロメリア品種
タンクブロメリアには多くの品種がありますが、初心者の方におすすめの品種をいくつか紹介します。
- ネオレゲリア:色鮮やかな葉が特徴で、育てやすい品種が多いです。「ファイヤーボール」や「カロリーネ」などが人気です。
- グズマニア:花が長期間楽しめる品種です。「エンパイア」や「デザイア」などがおすすめです。
- ビルベルギア:筒状の葉が特徴的で、「ヌタンス」や「ピラミダリス」などが初心者向けです。
- エクメア:大型の品種が多く、存在感があります。「ファスシアータ」や「チャンティニー」などが人気です。
これらの品種は比較的丈夫で育てやすく、初心者の方でも楽しく育てることができます。
まとめ
タンクブロメリアは、独特の形状と美しい葉色を持つ魅力的な観葉植物です。水やりが簡単で初心者にも扱いやすく、インテリアとしても人気があります。適切な日光、水、温度管理を行い、季節に応じたケアを心がけることで、健康に育てることができます。また、種からの育成や株分けによる増やし方、病害虫対策なども把握しておくと、より楽しく育てることができるでしょう。タンクブロメリアを通じて、植物育成の喜びと自然の素晴らしさを感じてみてください。